OFDM通信においてISI(Inter Symbol Interference)やICI(Inter Carrier Interference)の影響と、その対策について簡易な信号を用いて検証してみた。
OFDM通信は携帯電話のLTEや無線LAN等で使われる無線通信方式の一つだが、複数の周波数特性の異なる搬送波(周波数)を一度に処理(FFTとか)を行う都合上、マルチパス等の影響も受けISIが発生してしまう。その対策として、商用化されている無線通信システムではGuard interval(以降GIと記載)やCyclic Prefix(以降CPと記載)等と呼ばれる通常の信号を延長させその中の干渉しない一部の信号を取り出して復調処理を行う事で期待する信号を取り出す、という事をしている。
Scilabを使用したグラフを使ってみていく。(説明では、周波数軸上で異なるマルチパスによるタイミングずれを例として用いる)
①まずは、タイミングずれのない場合について
横軸は時間で、2Symbol分のを表し、縦は周波数軸を表し隣接する周波数の2キャリア分の信号を表している。
ここでは、タイミングが一致しており、CP区間はFFTに用いずに信号その物をFFTに用いることが出来る。その為、品質の良い信号の抽出が可能である。(最後にconstellationにて比較した図を設けている)
②次に、周波数軸上でタイミングのずれた(CP長内のずれ)場合を示す
ずらし方が雑なのはご容赦頂くとして、CP長内のタイミングずれであれば「水色⇔」で囲っているSymbolが複数の周波数軸上で一つのタイミングでFFTを行ってもISIが発生していないことがわかる。ただし、タイミングが元の信号から多少はずれている為、FFT後のconstellation結果へは多少の影響はある。(後述)
③最後に、周波数軸上でタイミングのずれた(CP長以上のずれ)場合を示す
上記の「水色⇔(FFT対象のSymbol)」の区間を見ると、時間軸上で隣のSymbolがFFT対象のSymbolに含まれている事がわかる。
これら、3つのパタンをFFT結果後のconstellationで表すと以下のようになる。
これが、変調方式がQPSKだった場合、青色のタイミングずれのない信号は正常に復調出来ていることがわかる。タイミングずれはあるがCP長内のずれの信号については、タイミングずれの内信号よりは多少ずれてはいるが、象限は変わらない為こちらも正しく復調出来ることがわかる。
最後に、CP長を超えたタイミングずれの信号は象限が変わってしまっており、復調が失敗することがグラフからわかる。
※実際には、FFT結果の信号をそのまま使うわけではなく周波数ずれの追従であったりチャネル推定による復調を行う事でより精度の高い通信を行っている。
上記のことから、CP長がもたらす効果が目に見えて分かったと思う。ただし、今回の場合は、QPSK信号としてみた場合で解説したが、QAM系で変調した場合などを考えてみるとCP長内のタイミングずれでも、場合によっては復調が失敗してしまう程度の影響があることがわかるだろう。商用化されている通信システムではこのような影響を考慮し変調方式や符号化率を無線環境によって適時自動で変化させ安定した通信を心掛けている。